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​ファフナーには失敗がない という話

蒼穹のファフナーという作品中で、「失敗」がえがかれることは少ない。というか、ない。

どんな苦難への道のりであっても(無印4話ポエム)、それが間違いだったと言う描写はない。その理由はEXO26話の織姫のセリフにある。

「痛みも悲しみも、生きることすべて祝福なの」

「すべてを受け入れて世界を祝福するとき、誰もが希望に満ちた未来を拓く。いつだってそれは、信じていい未来なんだよ、総士」

どんな苦難もすべて祝福。生きているから…ここにいるから、できること。それに対する肯定。

そして、世界を祝福するとき(=命を使うとき、とここでは解釈)、誰もが希望に満ちた未来を拓く。命を賭して戦った人たちの拓いた未来は希望に満ちていて、信じるに足るものである。だからそれを失敗だったと言うことは、ない。

 

実際ファフナーにおいて失敗だったということはない。ここからは全てifの話になってしまうが……マークエルフが命令無視してヘスターを助けた時でも、あれがなければ人類軍側と竜宮島がコンタクトすることはなかったかもしれない。

あの一件がなければ、一騎があれほどまでに総士への疑心を募らせることはなかったかもしれない(総士は一騎の命令無視について「全て僕の責任です」と言っている)。

ヘスターが死んでいたとしても、次に同じ役職に就く人間が竜宮島に好意的かといえばそうではないだろうし、ヘスター以上に敵意を持って竜宮島を襲ってきたかもしれない。

翔子があのとき出撃しなければ、竜宮島は例のもっと甚大な被害を被っていたかもしれない。翔子の死は子供達に大きなショックを与えたが、それがなければ甲洋が戦意を燃やすことはなかったかもしれない(もともと甲洋は戦いを怖がっていた)、真矢や溝口さんを助けることはできなかったかもしれない。

一騎が家出までに至ったのは、10話までのあの全ての積み重ねがあったからこそだ。違う道を選んでいたら、一騎は島を出なかったかもしれない。結局総士との和解もできず、疑心を抱き続けたまま自己犠牲に走っていたかもしれない。マークザインを手にいれることもなく、道生やカノンが島に来ることもないかもしれない。日野美羽は生まれないし、スレイブ型甲洋も生まれない。ミョルニアも来ず、皆城総士の奪還も叶わない。蒼穹作戦が行われないということは、北極ミールは粉砕できないし、フェストゥムに痛みを教えることもない……。あれ、これ詰んでない?

 

「正しい力、正しい道を求めること…あなたはそれができる人だよ。あたしに会いに来たのがその証拠。道は、あなたの中にあるよ、史彦」

今まで竜宮島がそうやって希望に向かって歩むことができたのは、史彦がいたからかもしれない…。歴「史」とは、人の歩んだ道のりのことである。

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