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 西尾暉は、「特別な力を持たなかった真壁一騎」だと思う。

 

 もともと失声症は一騎にあった設定だというのも含め、2人には「似たような"暗い海"から出発して、人との関わりや長い旅を経て命の使い道を定めた」という共通点がある。

 EXO24話はそんな2人の分岐点だ。同じように希望のために命の使うと決めた2人だが、暉はその命を散らし、一騎は生と死の循環を超える命を得た。

 一騎は、1話で「負けませんから」という暉の言葉に対して、「はいはい」と流すだけで、正面から答えていなかった。24話では答えられる状況にもなく、結局暉に対して返事をしていないことになる。

 

 特別なファフナーに乗れる能力を持つこと、真矢に好かれていること。一騎は暉がどう努力しても持てないものを持っている。はじめから不平等な勝負なのだ。「俺も負けないぞ」と気遣いを述べるにせよ、「俺には勝てないぞ」と現実を突きつけるにせよ、一騎が”真剣に”答えてしまえば、その勝負は一瞬で終わってしまう。一騎が答えを出すのは「ずるい」ことなのだ。言い換えれば、冗談めかして答えるほかなかった。

 一騎が真矢から寄せられた好意に自覚的であったかはともかく、一騎は暉と上手な付き合い方をしていたのだと思う。

 

 暉は一騎に絶対に勝てない。それゆえ、一騎は真面目な答えを出すことができない。「お前はよくやっている」と認める言葉でさえ、その力量差が明確であるからこそ、「負けませんから」という言葉でわかるように、”一騎と同じフィールド/目線で戦おうとしている”暉には、上から目線の侮辱になってしまう。

 

 広登の「よく頑張ったな」という言葉は、HAEでミールのフィールドを受け止めた広登に対して一騎がかけた言葉である。

 これこそが、一騎から暉に贈られた唯一の”暉を認める言葉”なのだと思う。

 直接告げるにはあまりにもずるすぎる言葉が、暉と同じ立場で暉を導いた広登を経由して託された構図は本当に秀逸だと思う。

 

 24話ラスト、ザインに乗って駆けつけた一騎が「間に合わなかった」ことを察した瞬間の苦々しい表情も、その言葉にはできない一騎の気持ちを物語っていると思う。自分と同じような存在であり、同じように努力をしながらも、自分のような特別なものを持たなかったがゆえに死という結末を迎えてしまった暉。一騎のあの表情には、ただ間に合わなかった・守れなかったというだけでなく、同じように戦おうとしていたのに彼は死に、自分はまだ生きている、という状況に対する複雑な思いがあったのかもしれない。

 

 暉は一騎のように特別な力を持たなかった。

しかし、彼がすべてを受け入れ世界を祝福し、守り抜いた希望は、確実にこの未来を照らしてくれる。彼に報いるのは、同じ希望を守るという決意を貫くことにほかならないのかもしれない。

 真壁一騎は、西尾里奈は、そんな彼の希望を受け継いで戦い続ける。芹から広登へ、広登から暉へ、暉から里奈へ、対話の可能性という希望は受け継がれていく。

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